【鬼滅の刃】鬼殺隊のホワイト化に向けたご提言

鬼殺隊は、ブラック企業である。
しかも、約一千年存続した由緒あるブラック企業である。
隊士の多くが入隊した理由は、鬼に家族を殺された為であるが、多くの隊士が死んだ理由は、鬼殺隊がブラック企業であったためである。
 
この度、国家の公認ブラック組織であった霞が関が、ホワイト化に向けて動き出したと聞く。当然課題もあるが、組織の問題解決に向けて動き出した事自体は大きな前進である。
 
また、映画も大人気である。(早く行きたい・・・)
 
そこで、ここは世の中の流行りに乗っかり、国家非公認のブラック企業である鬼殺隊も、どのようにすればよりホワイトな組織に変化していけるのかを提言したい。
 
鬼殺隊がブラック企業たる所以は、以下の3つの点に無頓着であるためである。
1)鬼殺隊は、隊員の育成に無頓着である。
2)鬼殺隊は、隊員の死亡率改善に無頓着である。
3)鬼殺隊は、組織における問題の解決に無頓着である。
(いずれも組織としては致命的な問題である。よく数百年も組織を保つ事ができたものだ……)
以下、順次解説する。

ベンチャーキャピタルからの「これ、資金調達テストに出ますよ」というメッセージ~グロービスMBA事業開発マネジメント

 

グロービスMBA事業開発マネジメント
 

 会社で購入してもらったので、ありがたく拝読。

ご存知グロービスMBAシリーズの一冊。

まず、この本は、VCをメインとして行っているメンバーが、起業家や大企業の新規事業開発の担当者に向けて記載した本である。

 

 

つまり、企業への出資を生業としている著者が、「我々は、ここに書かれている内容をクリアしている企業を、成功する可能性が高く、出資に値する企業とみなします」というメッセージを記載しているという前提で読むべき本だと感じた。

 

 

たとえば、本書では事業ビジョンの策定はほぼマストであるように記載されている。

しかし、事業ビジョンの策定がなされていようがいまいが、成功する企業は成功する。

実は、その点について、著者たちも熟知しており、この本で書かれている事を全て実践しても、必ず成功するわけではないと本書の中で認めている。

 

 

つまり、著者たちも含めてどの事業が成功するか・失敗するかは誰にも分かっていないのだ。(考えてみれば当たり前だが)

 

 

ただ、それではどの企業に出資するべきかの基準が不明なので、「当社の資金調達テストに出るのはこのポイントです。テストまでここに書かれた項目については当社のテストが実施される前にクリアしておいてくださいね」と書いているのである。

 

 

とはいえ、それは、この本を始めとしたMBAシリーズに書かれた内容が役に立たないことを意味するのではない。

出資に係る意思決定者の多くはMBAホルダーであることが多く、各社の資金調達テストの内容は概ね共通していると考えて間違いない。(どの出版社の教科書でも数学Ⅱは数学Ⅱであり、世界史は世界史である)

※ただ、孫正義さん等の有能な創業者の出資についてはここでは考えないものとする。

 

 

総じて、事業に出資することを生業としている人たちと会話する上で、最低限の用語を理解するために非常に有用な本である。

次はファイナンスを読むことにする。

 

 

この本の限界を一番理解していたのは他ならぬ作者自身だった~『プレゼン資料のデザイン図鑑』前田 鎌利

ボスにこの本を読んで講演資料の作り方を勉強しろと言われて読んだ本。

プレゼン資料のデザイン図鑑

プレゼン資料のデザイン図鑑

  • 作者:前田 鎌利
  • 発売日: 2019/03/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

とても勉強になったので、備忘のために感想を記したい。

この本自体はこのようにプレゼン資料を作ったほうがよいというノウハウを一つ一つ記載している。

たとえば以下のような内容である。

 

【勉強になった内容】

  • 人間の視線は左上から右下に「Z」の流れで動くので、左上にタイトル、グラフは左、メッセージは右、スライド番号は下に置く。
  • グラフ→キーメッセージ①→キーメッセージ②で視線を誘導する「逆L字」での視線誘導も有効
  • キーメッセージは13字以内で書こう。
  • 良いメッセージは青、悪いメッセージは赤にする。
  • ロジック流れは↓よりも▼で表現する。
  • 単一事項の実数の増減は棒グラフ
  • アンケートは横の棒グラフ
  • 割合は円グラフ
  • 複数図工の増減や構成比の増減は折れ線グラフ
  • 表のフォーマットは色を付けずに背景は白で統一したほうがよい。また強調ポイントは赤枠で囲ったほうがよい。
  • 写真は効果的にに使おう。

 

まず面白かったのだが、作者自身あとがきで書いているように、この本の内容はソフトバンクのように紙ゼロを徹底している会社に最適化された内容となっている。

もっと言うならば恐らく孫正義社長のプレゼンに最適化された内容になっている。つまり圧倒的に口が上手く、資料がなくてもプレゼンが得意であろう孫正義社長のプレゼンを補強する内容となっている。よって、プレゼンがさしてうまくない私などが官公庁のキャリア官僚の皆様にこれと同じ形式で資料を作っても、ただイタイだけである。

作者も言うようにそれぞれの企業文化に合わせて本書のノウハウを適宜アレンジしながら、現状のプレゼン資料を改善する参考資料として使うのが最適化と思われる。

 

あと、個人的に気になったのが、なんでこんなに提案書に使える写真が潤沢なん?普通こんなに著作権フリーで使える写真素材、普通の営業マンは持っておらんで……それともアレなん?孫正義社長は写真素材は予算無制限に買っていいことになってるん?

 

その点だけは妙に気になった。

なぜドーキンス先生は、40年間も怒られ続けているのか?~『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス

  • 「21世紀のマキャベリ
  • 【乱暴な要約】
  • 理由その1~生存戦略戦略上では、サイコパスの生き方こそが最適解であると肯定している。
  • 理由その2~神や宗教をミーム(=脳内に保存され、他の脳へ複製可能な情報)として定義している。

 

「21世紀のマキャベリ

以前、私が愛読するブログ『無限の地平はみな底辺』において『利己的な遺伝子』が紹介されていた事がある。

kanchigai.biz

上記記事において、作者のドーキンスは、以下のように紹介されていた。

 「21世紀のマキャベリ」、キリスト教勢力がそう捉えている男である。 

利己的な遺伝子 40周年記念版

利己的な遺伝子 40周年記念版

 

それ以来、ずっとこの『利己的な遺伝子』が気になっていた。

そして、この度、ようやく読み終わった。(マジで長かった……)

 

「いや~。確かにこれは教会から怒られるわ……深刻な怒られが発生するわ……中世ならば確実に火炙り不可避」

 

これが、読み終わった後の私の最初の感想だった。

私が読んだ40周年記念版には、「第2版の前書き」や「30周年記念に寄せて」「40周年記念版へのあとがき」が掲載されているのだが、いずれの項も、発生した怒られに対する弁明に結構なページを割いている。

これは、ドーキンス先生がこの本を出版して40年経ったにも関わらず、ずっと怒られ続けている事を意味する。

 

40年の間、ずっとこの本は炎上し続けているのだ。

 

どんな炎上案件であっても、40年間も炎上し続けるとか、明らかに異常である。なぜ、ドーキンス先生は、40年間も怒られ続けているのか?

 

今日はそれについて書いてみたい。

 

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私が森嶋帆高に恐怖した理由~『天気の子』感想

天気の子を見に行った。

楽しかった。しかし、なぜかものすごく不安になった。
さらに、なぜかものすごく「君の名は」を再び見たくなった。

そして、その夜は、さっぱり眠れなかった。

てっきり襲ってきた台風15号のせいだと思っていた。
しかし、それは違った。鑑賞から数日経った今ならわかる。

 


私はずっと、森嶋帆高に恐怖していたのだ。

 


その理由がさきほど自分の中で腹落ちしたので、備忘のためにここに記す。
つくづく新海監督の作品には、私のような末端の視聴者にさえ何かを語らせてしまうだけの力がある。

先に書くが、ネタバレ満載だ。もし見ていない方がいれば、速やかにブラウザバックされたし。

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全ては作者の出まかせであってほしい〜猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

読了。元ヤクザの組長が語るアンダーグラウンドのよもやま話。

西原理恵子氏はほとんど出てこないので、ファンはがっかりするかも(^_^;)。
語られていることがどの程度真実かは分からない。ただ、発展途上国での人身売買の章は、同じ子供を持つ者としてはあまりにも凄惨で、非人道的で、身を切られるほど酷いエピソードに満ちている。

願わくば、ここで語られている事が、作者のでまかせである事を心から願う。

弱者を率い続けた"最強"の男〜『弱者の兵法』(野村克也氏)

弱者の兵法

弱者の兵法


野村克也氏は、最強です。


長嶋、王の両氏に隠れて目立たなかったが、素体スペックで見ると、紛れもなくプロ野球史上最強の選手であると考えています。


私は、野村克也氏の事をずっと誤解していました、
ID野球というデータを重視する賢者のイメージから、王貞治氏と同様に早稲田あたりで統計学を専攻した人間だと思っていました、


だが、実は彼は、極貧家庭の生まれでした。父を早く亡くした彼は、兄が大学進学を諦めることで、高校に進学できました。さらにボールの握り方さえ教えてもらえなかった弱小野球部の出身でした。普通ならば、プロ野球選手になろうという発想にさえ絶対至ることのない環境であると言えます。


しかし、彼は各球団に手紙を書いて契約金ゼロで南海に滑り込み、何度もクビになりそうになりながら、「クビなったら南海鉄道に飛び込む」とゴネまくり、45歳に引退するまでに以下のような功績を立てることに成功します。

・戦後初の三冠王(捕手の三冠王は世界史上初)
・通算本塁打数歴代2位(以下、いずれも1位は王貞治
・通算安打数歴代2位
・通算打点数歴代2位
・選手兼監督を兼任し、「4番打者」「捕手」「監督」の3つの重責をひとりで担いつつ、打点王も獲得。

家族の愛情やサポートに恵まれ、甲子園出場経験もある文武両道の名門進学校を卒業してプロになった長嶋茂雄氏や王貞治氏とは異なり、野村克也氏は、底辺から己単体の才覚のみで彼等2人に匹敵、いや、項目によっては彼等を遥かに超える業績を叩き出しました。


これが、私が野村克也氏を"最強"と評する理由です。


この本の凄さは、そのタイトルにあります。
『弱者の兵法』。


いかがでしょうか?


もう一度繰り返します。


野村克也氏は、"最強"です。


しかし、彼は終生己を"弱者"と認識しており、さらには率いる選手全てをたとえどんなに才能があったとしても"弱者"と認識していました。

〉野球は〝たら・れば〟のスポーツである。たら・れば〟のスポーツだからこそ、勝つためには極限までリスクを抑え、可能な限り成功する可能性の高い選択肢を選ばなければならない。それは、弱者の兵法の鉄則でもある。


だから彼は勘に頼らずデータを信用しました。さらに、彼はこう言っています。

〉だが──なによりデータを重視する私がいうのは奇異に思われるかもしれないが──データは絶対ではない。データはあくまでも過去のものであり、それを妄信してしまうのは禁物なのだ。過去のデータを踏まえつつも、つねにそれを最新のものに置き換えておかなければならない。そのために、とくにキャッチャーには打者分析の能力が不可欠であり、そのために必要なのが観察力と洞察力なのである。


己を弱者と捉える彼は、自らの強みであるはずの取得したデータでさえ、信用していませんでした。


ただ、この本からわかるのは野村氏の凄さだけではありません。人間臭さも滲み出ています。例えば、己の勘でのし上がり、自分に自信を持ち、自分が強者であることを疑わないイチローには手厳しい表現が続きます。
一方で犬猿の仲と思っていた星野仙一氏の能力を高く評価しているのは意外でした。
(→阪神の後任監督に推薦したのは、実は野村氏本人だったという事実には正直驚かされました)
内容については、どうしても昔の選手は良かったという論調になりがちで、戦略論めいた話よりも精神論的な話のウエイトのほうが大きいです。この辺も非常に人間臭いですね。戦略論を期待して読むと肩透かしに合うかもしれません。
また、彼の成功は、プロ野球自体が現在ほど短期的な成果を求められなかった時代であることも深く関係していると思われます。「失敗と書いて成長と読む」という座右の銘や、「一年目は土を耕し、二年目に種を撒いて、育てます。花を咲かせるのは三年目です。それまで待ってくれますか?」という彼が監督を引き受けるに当たって出している条件も、今では受け入れられない可能性が高いでしょう。


しかしこの本が、底辺から徒手空拳で頂点を掴んだ男が語った名著であることに変わりはありません。


我々が彼から学ぶべきは、己を弱者だと認識し続けるその姿勢にこそあるのですから。


弱者の兵法

弱者の兵法