【鬼滅の刃】鬼殺隊のホワイト化に向けたご提言

鬼殺隊は、ブラック企業である。
しかも、約一千年存続した由緒あるブラック企業である。
隊士の多くが入隊した理由は、鬼に家族を殺された為であるが、多くの隊士が死んだ理由は、鬼殺隊がブラック企業であったためである。
 
この度、国家の公認ブラック組織であった霞が関が、ホワイト化に向けて動き出したと聞く。当然課題もあるが、組織の問題解決に向けて動き出した事自体は大きな前進である。
 
また、映画も大人気である。(早く行きたい・・・)
 
そこで、ここは世の中の流行りに乗っかり、国家非公認のブラック企業である鬼殺隊も、どのようにすればよりホワイトな組織に変化していけるのかを提言したい。
 
鬼殺隊がブラック企業たる所以は、以下の3つの点に無頓着であるためである。
1)鬼殺隊は、隊員の育成に無頓着である。
2)鬼殺隊は、隊員の死亡率改善に無頓着である。
3)鬼殺隊は、組織における問題の解決に無頓着である。
(いずれも組織としては致命的な問題である。よく数百年も組織を保つ事ができたものだ……)
以下、順次解説する。

1)鬼殺隊は、隊員の育成に無頓着である。

鬼殺隊は、常に人手不足である。後述するように隊員の死亡率改善に無頓着であるため、力の無い新人からバタバタ死んでいく。この度、劇場公開される無限列車編でも、炎柱の煉獄氏が投入されるまでに既に何人も死んでいる。
 
さらに最高幹部たる柱も、人数がスタート時点から不足している。無限城最終決戦の前に胡蝶しのぶは、「上弦の鬼は、一体につき柱3名に匹敵する」と分析している。(この分析は極めて正確であったことは後の巻で明らかになる。)上弦の鬼は全部で6人いる。十二鬼月という言葉からわかるとおり、鬼殺隊もこの点は把握している。つまり、上弦の鬼を葬るためには最低でも柱は18人必要という事になる。登場時、柱は9名である。まだ半分しか育成できていない。組織として、素質のある人間を柱として育成し続ける必要がある。
 
しかし、鬼殺隊はこの能力のある人間を組織として育成するという事に関して、驚くほど無頓着である。ほぼ、本人の資質にのみ頼っている。
例えば、真菰や錆人。おそらく、彼らは確実に柱になり得た資質を持った人間である。しかし、鱗滝さんは何故か彼らを含めた十数人の生徒に対して全集中常中すら教えず、不完全な状態で最終選別に送り出し、犬死させている。指導者として比較的マシな鱗滝さんでさえ、このザマである。この育成の不備は、もはや組織による人災である。
 
ただ、そもそもの育成の基準が不明確であり、育成が育手に全てが丸投げされている以上、鱗滝さんばかり責めるのは酷である。やはりここはお館様を中心とする本部が育成方針と最終選別参加資格を明示するべきであろう。
具体的には、とにかく柱の育成が急務である以上、最低でも全集中常中ができるようになっている事を条件とする事が望ましい。チェック方法としては、選別前にあの蟲屋敷に置いてある巨大な瓢箪を準備しておけばよいそうすれば20人中5人生き残れば上出来等というふざけた結果にはならないだろう。柱稽古だってもっと早く始めれば、隊員全体の能力の大きな底上げとなったはずだ。
 

 2)鬼殺隊は、隊員の死亡率改善に無頓着である

1)とも関連するが、とにかく鬼殺隊は、隊員は雑草のようにいくらでも湧いてくると思っている。
無限列車においても、数十人が行方不明→何人かの隊員も行方不明→柱を向かわせるという典型的な戦力の逐一投入という愚を犯している。さらに気絶しないと真の力を発揮できない善逸を一人で任務に向かわせるなど、とても正気とは思えない運用をしている。
 
鬼殺隊にとっての最大のリスクは、育成に時間がかかる柱や柱候補が、うっかり上弦の鬼等に遭遇して死ぬことである。それを防ぐためにも、やはりナルトという先行者に学び、スリー、もしくはフォーマンセルを行動単位とするのが望ましい。そうすれば、チームワークで鬼と戦うスキルも上がるであろう。
 
 

3)鬼殺隊は、組織における問題の解決に無頓着である。

一番致命的なのはこの点である。
アニメのオリジナルシーンではあるが、柱合会議で不死川実弥が、「新規隊員のレベルが低すぎる。育手の目が節穴ではないか?」という極めて良い問題提起をしている。
ただ、それに対してお館様は「でも君たちは、過去最高の精鋭だと思うよ」という全く関係ない話をしてこのミーティングを終わらせている。
というかキレろよ、実弥。お前、最高幹部だろ。
 
「すいません。新入隊員の能力が低いことと、俺たちが精鋭であることになんの関係があるんでしょうか?」と言ってお館様を突き上げるところだろ、そこは。
 
そもそも、鬼殺隊にはこうした組織の問題を解決したり、組織を動かしたりするオペレーションマネージャーが欠けている。鬼殺隊には河野大臣も事務次官官房長官もいない。ただ、首相と末端の官僚しかいないいびつな組織である。いや、そもそも組織の体を成していないと言って良い。
 
この組織に必要なのは最高執行責任者であるCOOである。
では、そんなCOO候補は鬼殺隊にいるか?
 
いる。悲鳴嶼行冥である。
 
柱最強であり、指揮官能力もある彼であれば、他の柱も言う事を聞く。
 
「行冥、実弥としのぶと別で打ち合わせて、本件の解決案を考えて。3日後に改めて結果を報告して」
 
お館様が出すべき指示はこれである。幹部のメンタルケアだけしていればいいわけではない。Topの仕事は方針を示すことである。
 
さて、提言をまとめると以下になる。これで鬼殺隊という組織は、相当にホワイト化することが期待できる。
1)鬼殺隊は、隊員の育成に無頓着である。
→育成方針を明確化し、できれば全集中常中を最終選別の参加基準とする。
2)鬼殺隊は、隊員の死亡率改善に無頓着である。
→癸から柱に至るまでスリー、もしくはフォーマンセルで任務にあたるように徹底する。
3)鬼殺隊は、組織における問題の解決に無頓着である。
→行冥を中心に問題解決を行うフローを隊内で作り上げる。
 
……ふう。映画が流行っているので、一気にもやもやしていた思いを書き上げてみた。スッキリした。